日常 造形論

生徒指導と図工の間に・・・

中條 範子

 「生徒指導」と「造形」を並べたとき、それぞれの言葉から受ける印象は、とても遠いところにそれぞれがあるようにとらえられがちです。みなさんはいかがでしょうか。

しかし、令和4年12月に改訂された生徒指導提要において、生徒指導の目的では「学校が提供する全ての教育活動の中で児童生徒の人格が尊重され、個性の発見とよさや可能性の伸長を児童生徒自らが図りながら、多様な社会的資質・能力を獲得し、自らの資質・能力を適切に行使して自己実現を果たすべく、自己の幸福と社会の発展を児童生徒自らが追求することを支えるところに求められます」と示されています。つまり、「個性」「よさ」「多様」「自己実現」という言葉とともに、自らが追求していくことを先生たちは支えます、と示されているのです。

この生徒指導提要の改定を受け、改めて読んでみると、生徒指導と造形はかなり近いところにあると感じたのは、私だけではないと思います。造形に造詣の深い先生方にとっては今さら・・・というところですが、「生徒指導」のバイブルにおいても、教員が一方的に指示・指導し、ビシッとそろう画一的なものを求めてはおらず、むしろ、多様な感じ方や表現に触れ、見方考え方を広げて、子供一人一人がもつ個性を引き出し、自己実現を果たすための指導・支援を行う、とされているのです。生徒指導はそのまま造形にフィットするような形になっているととらえられます。

 私は現在、学校を離れて生徒指導関係の役割を担っていますが、造形の研修会でお会いする方の中には、「生徒指導の仕事なんて大変ね」と感心してくださる方がおられます。しかし、造形に本気で向き合って子供に寄り添ったご指導をされている方々は、すでに日々の授業の中で生徒指導の機能を生かした造形を行っていると思うのです。また、これに沿うと、一方的で、画一的で、手順通りに同じものができあって、子どもの思いがない先生の意図する作品になるような図工をやってはいけない、ということの理由を、生徒指導提要からも裏付けることができます。

 本研究会で議論されてきた内容や提案してきた題材というのは、最新の求められている生徒指導の内容につながっているのだということを改めて感じております。生徒指導の機能がすでに盛り込まれて確立している図工の時間を、これからも大切にしつつ、皆さんとも議論を重ねていきたいところです。

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