東京家政学院大学 立川泰史
たくさんの参加者さんと「見方遊び」で楽しんだのは、わたしたちが「〜らしさ」を探る着目点の違いとよさ、面白さ、でした。
一般に、「見知らぬもの」に出会った人は(それがどんなに美しいものであっても)、すでに「知っているもの」になぞらえて安心しようとします。一人ひとりの「知っているもの」は異なるので、「なぞらえる−もの」も人それぞれ、これも当然といえるでしょう。
たとえば、ゴッホの「ひまわり」の黄色を、好物の「インドカレー」になぞらえる人もいれば、近所の「稲穂がしげる景色」になぞらえる人もいるでしょう。表向き縁遠いもののあいだに「〜らしさ」を見いだし、異なるものの「縁を結ぶ」ことで、出会ったものを「解ったつもりになる」こともあります。結構、各自が勝手に〈理解の網〉を編んで暮らしているのが日常なのかもしれません。
さて、このワークショップでは、ぞれぞれの見方や感じ方が「みんな違って、みんないい」といった雑ぱくな「多様性」で片づけたくありません。ある対象が「いかようにも、なぞらえられていく見方」、ひとつのものに隠れている特徴を、視点や意味を換えて理解する、そんな「多義の気付き」を楽しむことができました。
今回は、その違いやよさが「より身近なものによって共感できるように、「給食の献立」を「名画でお盆の上に構成しよう」ということをテーマにしました。
テーブルにちりばめた名画や彫刻の「アート・カード」、なつかしい給食のお盆の上に、献立どおりの給食を、目の前の「名画」で再現していきます。
例えば、ゴッホの黄色の中に、人気メニューの「カレーらしさ」を“見る”、「あげパンの香ばしい香り」を“見る”。あるいは、ユトリロの乳白色に「甘い牛乳らしさ」を“見る”、など・・・。このような“見る”の内には、「嗅ぐ、聴く、触るも“見る”のうち」といったような共感覚オールスターズに根ざす給食体験がきっと影響しています。
不思議なのは、「〜らしさ」の視点で着目される特徴が意外といっしょで、妙に共感できた点です。同じ国の、同じような学校で過ごしたからなのか、「感覚アート体験」ともいえる「見方遊び」の楽しみ方は、今後もしばらく探っていきたいと思いました。