足立区立足立小学校 薄井淳
2023年の夏の大会では、平田先生、堀井先生とのトークセッションの中で、造形遊びの実践を通した子どもの活動をいくつか紹介させていただきました。セッション終了時刻となっても、まだまだ話していたいような、とても楽しく自分自身も大変学びの多い時間でした。その中でも特に、子どもがねらいとは別の活動に熱中している姿に対する先生方のお話が印象に残っています。
平田先生からは「子どもが何を感じているのかを共に視ることが大切であり、ここが子どもとの対話のチャンスだ」というお話をいただきました。授業者としては「この子たちをどうねらいにもっていこうか」などと考えながら、ピンチのように対峙していたのですが、それはその子たちのことを知るチャンスでもあるのだと、まさに目から鱗のようなお話でした。子どもと教師が対峙的に“向かい合う”のではなく、子どもが感じていることを共に視るような“横並び”の姿勢が、子どもの世界を知ること、広げることにとっては重要な意味をもつのかもしれません。
堀井先生からは「これでいいんだという意識を持つことが大切だ」というお話をいただきました。ねらいに固執しすぎると、ただ教師のイメージ通りに子どもを動かすような授業になりかねません。ねらいや意図など、いわゆる“大人の視点”だけで考えるのではなく、そこで実際に活動している“子どもの視点”に寄り添い、「これでいいんだ」と肯定的に受容していく態度が大切であり、そこで感じた“ズレ”はまた次の活動に生かしていくことが授業を構成する上で重要なんだと感じることができました。
ご参加の皆様からいただいたアンケートからも、「題材のねらいに沿って活動しているかに注目しすぎず、子どもとの会話を楽しみ、子どもの世界に入ってみようという姿勢が教師に必要なんだと思った」や「こういった姿(ねらいとは別の活動に熱中する姿)は、『目標や教師の手立てが明確であったかどうか?』という視点で語られるのが定形ですが、今回はあくまでも子どもの姿から語られていたのが良かったです」など、子どもの視点に立ち、共に感じることの大切さについてのご意見を多くいただきました。また、「図工を楽しいものだと改めて教えてもらえた気がします」や「日頃の『これで良いのか??』が『これで良いのだ』に変わりました」など、今大会のテーマである「サイコー再考『たのしい図工』~やっぱり図工はおもしろい?~」に対するアンサーのような感想も多くいただきました。ありがとうございました。
大会の最後に平田先生のお話にあった「絵の具でスーっと描いた線、それはあなたの気持ちだよ」という言葉が忘れられません。図工ではつい造形的側面に気を取られ、その奥にある子どもの存在に目が届きにくくなることもあるかと思います。ねらいや意図という大人の視点と実際にそこに生きる子どもの視点の両方を意識しながら「やっぱり図工はおもしろい!」と大人も子どもも言えるよう、今後とも、子どもと世界を共有し、共に造形を楽しんでいきたいと思います。