冬研 大会 2025

回転寿司式鑑賞法 おでかけ児造研in新潟・長岡 ふりかえり

 児童造形教育研究会 会長 北川智久

回転ずし式鑑賞法とは?

1.冬研での活動の概要

「学校もりあげマスコット」という題材をみなさんに取り組んでもらいました。

自分の地域や学校のよさをアピールするもの、自分が好きなものをもとにしたものなど自由です。

その内容は、3.冬研in長岡小での回転ずし式鑑賞法で紹介します。

2.もとになった回転ずし式鑑賞法

「みる・かく・みる・かく 形のみたて」という授業です。不定形(何にもみえないような形)に色や形を描き加えて具象化する内容です。

紙の上下左右は自由。色の使用は自由。元の形をわからなくするような塗りつぶしはNG。

たった5分という制限時間で描き終えます。途中でも終わりにして、回転台の上に置きます。

写真②両方とも鳥だが、見立てる向きが違う。
写真③鳥の形につけ足して、鬼にしている。
写真④うさぎは同じだが左下はうさぎ三匹。

ゆっくり回すと、子どもの口から自然とつぶやきが出ます。

回転台には目安として数字がかいてあるので、「22番かわいい」のように、「プラス言葉」を中心にして話します。マイナスの言葉を使わないのは、図工だけでなく学校生活一般に大切な指導です。

回転台の直径は170cmありますので、台の反対側で「7番かっこいい」などとつぶやいた子がいたら、数秒の時差を経て自分の前にその絵がめぐってきます。このように、友達の鑑賞のタイミングと時差のある混とんとした時間や空間の中での鑑賞活動を楽しみます。

通常、このような授業では全員の絵を黒板にはり付けるなどして鑑賞するでしょうか。そして、挙手して指名された子が順に自分の感想を言うことになるでしょうか。ほかの子は待たなければならないし、黒板の端の方の絵は小さくて見えにくい。大型モニターに映せばよく見えるけれど、自分では絵を選べないし、やはり自分の意見を言えるのは数名の子だけです。しっかり確認したいことと、多くの視点をもたせたいことのジレンマは、いつもありますね。

さて、回転ずし式鑑賞法では、自分の感想や考えがすぐに言えます。悪く言えば、声が重なってぐちゃぐちゃでわかりにくいかもしれません。しかし、近い距離での友だちの目線や息づかい、発話、指をさす動きなどを体の感覚全体で受けとめながらの鑑賞は、子どもにいろいろな気付きを与えます。

 しばらく自由に発話させた後、教師は「似ているところ、共通点は何?」、「ちがうところは?」のように発問することで、子どもの「みえ方」:が「見方」に変わるきっかけを与えることもできます。

「同じ鳥だけど、向きが違う(写真②)」「同じ形が鬼になっている(写真③)」「ウサギが人気だけど3匹のウサギがいる(写真④)」「形(不定形)の外側の形を使って外側に描いている」のような発見が生まれます。自分と友だちの表現の違いを楽しもうとしている瞬間です。

一回の全体鑑賞にあまり多くの時間を割かず、2回戦、3回戦と繰り返す中でのブラッシュアップを意図して、すぐ2回戦を始めます。

45分の授業の中で、この活動を3回くり返しました。くり返すたびにみたての質に変化が起こるのが見てとれました。また、毎回子どもに三段階の自己評価をさせましたが、2回目、3回目になるにつれて自己評価が高まっていった様子が黒板(写真⑤)からもわかりました。

黒板には横線がひいてあり、上に行くほど自己評価が高くなります。写真⑤では、左の水色が1回戦、真ん中のピンクが2回戦、右の黄色が3回戦です。右に行くほど自己評価の下位が減って、自分の表現に自信度を増している様子が分かります。

短いしめ切りを設け、鑑賞方法を工夫し、みる・かく・みる・かく、をくり返すという授業デザインが、子どもたちの感じ方や表現の高まりにつながった事例だと考えます。「自分の絵や考え方が高まった」「友だちのアイデアがおもしろく、みんなで考えることが楽しい」のように、個の見つめ直しや、集団の見つめ直しにつながる振り返りが多く見られました。

このような活動は、図工の授業で学び合う学習集団の安心感を増すだけでなく、クラスという集団の中で、日々の生活や他教科の中での居心地のよさも高めます。

写真⑤左から1回目、2回目、3回目で、上段ほど自己評価が高い。回を追うごとに自己評価が高まっている様子が見られる。

3.冬研in長岡小での回転ずし式鑑賞法

簡単な不定形からのみたてではなく、今回は「学校もりあげマスコット」をお題にしました。

上記「2.もとになった回転ずし式鑑賞法」の事例を、映像を交えて紹介した後に行いました。

たった5分間でも、冬研に参加した先生方はどんどん手を動かして絵を描き進めました。

回転台の上に乗せて、ゆっくり回します。

大人は、子どもほどは自由につぶやいてくれませんでしたが、「なるほど」「これってあれですよね」などとつぶやいたり、どよめいたりして反応していました。

回転台に同心円状に2cm間隔で7つの円が描いてあります。自分がいいなと思ったものを、自分の「推し」として「押し」ます。どんどん押されていく絵は、伝わりやすく受け入れられやすいということになります。

 

 多く押された絵について、「どうして押したの?」と問うと、「いろいろなものが組み合わせてあっておもしろい」のように感想が述べられました。

 このとき、不思議な絵が一枚ありました。その絵を見るときに、「先生、こわいです」と言われる絵がありました。なにやら、幽霊のような女性のような絵です。その絵がどうして「学校もりあげマスコット」なのか、作者に聞いてみる前にみんなで想像してみましたが、なかなかわかりません。作者の説明は、「トイレの花子さんのように、ネガティブな内容も学校の楽しさの一部だと考えて描いた」ということでした。この考え方は、私を含め参加した先生方に新しい視点を与えてくれました。わかりやすいことだけがよさではありません。説明を聞いたらすごくよくわかることもあります。表したいことと絵の表現のギャップが、だれかの補足意見を生み、集団の知識へとつながる可能性もあります。可能性だらけです。

 大人が描いた絵は、5分間とはいえあまりに完成度が高かったことと、全体的な会の進行が押していたこともあり、2回戦は実施しませんでした。

 

4.回転台での鑑賞の向き・不向き

  ②の実践と③の実践、そして③と同じ形での私の研究授業からわかったことがあるので補足します。

 ②のような簡単な図形からのみたては、情報がシンプルで「ひと目でわかる」ので回転鑑賞に向いています。③のマスコットは、情報量が多くて「ひと目ではわかりにくい部分がある」ので、②に比べるとゆっくり回転させる必要があったり、十分伝わらなかったりするということが分かりました。つまり、「ひと目でわかる」ような表現に対してより適しているということを実感しました。

5.付録 ダンボール製の回転台のつくり方

さて、回転ずし式鑑賞法は、とてもおもしろくて意味のある鑑賞方法だと考えているので、ぜひ追実践していただきたいと考えています。つくり方を紹介しますので参考にしてください。

うれしいことに、この日の参加者の中で、回転台を製作して3月に授業実践してくださった方がいらっしゃいました。子どもの笑顔と意欲につながったと報告してくださいました。

 180cm×90cmのダンボール板2枚で作成した。図のように、半径85cmの1/8円を切りぬいて、8枚で円にする。布ガムテープか透明のPPテープで貼り合わせる。中央は、プラスチックなどで補強するとよい。今回は、図工室にあった植木鉢の受け皿を電動糸のこぎりとドリルで加工して使用した。動画を参考にされたい。軸は直径6~8mm程度のボルトが適しているだろう。今回は欲張って、360度カメラを設置するために、カメラの三脚と同じ1/4インチのボルトを使用したが、それはマストではない。ボルト1とナット1とワッシャー2、中心の土台に使う5.5mm~9mm厚のベニヤ(画板などで十分)が必要になる。動画で確認されたい。

6.ご案内

ぞうけいなかまリンクでは、児造研の情報をはじめ、いろいろな造形関係の研修会情報を紹介しています。ときどきご覧いただくと、すてきな出会いが待っているかもしれません。

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