横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校 斉藤 洋介

「ああ!うまく剝がそうと思ったのに、(紙が)破れた!」そんな経験はありませんか?「破く」という動詞は、受け身の「破れた」という形でよく耳にします。あえて破く行為は私の日常生活ではありません。破るのではなく、「切る」や「整える」という行為になります。みなさんはいかがでしょうか。
この題材は、折り紙に貼り付けたマスキングテープを剥がし、あえて破くような行為から始まる造形活動です。
まず初めに、マスキングテープを貼ります。貼る箇所が折り紙の色がついている面という指定のみで、マスキングテープの貼り方には指定はありません。まず好きなように貼ってみましょう。真っ直ぐでも、曲がっていても、テープがよじれていても、大丈夫です。むしろ、様々な貼り方がこの後生まれる形をおもしろくしてくれます。この時、マスキングテープは手でちぎります。活動の豪快さが失われてしまうので、はさみやテープカッターは使いません。ちぎるのも思いっきりです。手先の感覚も養います。

次に、思いっきり剥がします。「ええっ!そんなことしたらやぶけるじゃん!」なんて子どもの声が聞こえてきますが、少し悪者気取りで「えいっ」と授業者が剥がします。すると、悲鳴と共に「あれ?意外ときれい。」なんて何も破れていない場合もあります。マスキングテープのよさを同時に味わいます。この「必ず破れるわけではない」偶然性が、活動をより盛り上げます。紙目も意識しながらもう一度貼り付けて剥がします。今度はうまく破れました。「ああー。」という落胆と同時に、「あれ?これ○○に見える!」という発見があります。続けて、貼り付けて剥がすと、また新しい発見があります。それは、折り紙の白い部分が、子どもの中で「破れちゃった結果」から「破いてみたら生まれた形」へと変化する瞬間です。


生まれた形を筆ペンでなぞってみます。名前ペンでも鉛筆でもよいのと思いますが、筆ペンだと線に表情が生まれるのでよく用意しています。なぞる前からイメージが生まれている子も、なぞりながらイメージが生まれる子もいます。「あれ?○○に見えてきた。」なんてつぶやきながら折り紙と距離を離して見つめ直す視線は、レイザービームのようにするどくなります。隣から友達がのぞき込み、「○○じゃない?」と新しい視点を与える姿も素敵です。
「ほら、見て!サメ!」と、嬉しそうに見せてきた子の折り紙をよく見て見ると、なんだか色が薄く感じます。そうです。なぞるのを裏から行ったのです。どうやら裏から見た破いた様子が気に入ったそうで、最初から裏をなぞるのを決めていたそうです。2回マスキングテープを剥がし、生まれた形が「口を開いたサメ」の形に見えたこの子は、すぐに次の折り紙にマスキングテープを貼りつけていました。

1年生の活動です。折り紙に対して斜めに貼り付けたマスキングテープを勢いよく剥がすと、「うお!パトカーだ!」とその瞬間に形を見立てていました。「ほら、ここにサイレンつけたらパトカーでしょ?」と、嬉しそうに見せてきます。「ここにタイヤをつけて…できた!先生、もう一度写真撮って!」と、より嬉しそうな表情をしていました。この後、「はたらく車シリーズ」をつくりたいとまっすぐ貼り付けては剥がす活動をしていました。

活動をしていくとその感触がおもしろく、誰もが何度も剥がしていました。中には、友達と一緒にカウントダウンをして剥がしたり、立ち上がってポーズを決めながら剥がしたりする子がいました。
最初、破れてしまう折り紙の心配していた姿はなんだったのかと聞きたくなります。
さあ、剥がしたら何か見えてきました。
このような活動を通して生まれた形を、折り紙を「どうしたい」ですか?
集めるか、並べるか、重ねるか、組み合わせるか…。
私はマスキングテープで、剥がしたい。
子どもはどうしたいか、考えるだけでワクワクします。この後どうするのでしょう。
あれれ?剥がしたマスキングテープも何かに見えてきたようです。
ぜひ、一緒にこのワクワクを楽しみましょう。


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