筑波大学附属小学校 北川智久
2024年10月26日(土)、成城学園初等学校の粟津先生と二人で、工作の公開授業対決をしました。「ただやりたかっただけ」が動機で、その後二人の立場(児造研会長と児造研事務局長)からこじつけて『児造研スピンオフ』と称して進めさせていただきました。
ご参加のみなさん、児造研スタッフのみなさん、サクラクレパス様、開隆堂出版様には大変お世話になりました。
自分の授業について振り返ってみますのでお付き合いください。
3年生のくぎ打ち系の題材は歴史が長く、形を変えながら取り組まれています。ひところは、板の端材や木の枝にくぎを打ちまくったり、そこにビーズや毛糸などで装飾をする題材が主流でした。時代が進むにつれて、木とくぎが混合された作品を家庭で処理することの是非が取りざたされるようになりました。ガラス瓶に紙ねんどををかぶせてお城をつくる題材が姿を消したように、環境問題への意識が変化したのです。
そこで、私は2002年に次のような活動を考えました。上記のような状況から必要感を持って考えた題材、「くぎくぎ流しそうめん」です。オリジナルなのですが、同じような活動は他の方もなさっていたかもしれません。現在のように簡単に検索できませんので調べにくいです。2002年より前からやっていたという情報があったら教えてください。
当時の3年生は、現在32歳ぐらいになっているでしょうか。
長い板材に協力してくぎを打ち、試したり遊んだりしては改良し、さんざん遊んだ後にくぎを抜いて板材の状態に戻すところまで学習です。
少しの問題点として、グループの中の人間関係によっては、平等な活動ができないことがありました。また、新たな発想を得た子がいても、個人の意見がグループに通りにくかったということもありました。物理的には、他の子がくぎを打つ振動が強く伝わって来て、手がしびれるということもあります。(下にぞうきんをはさむなどすると軽減します) 数年前、コロナ全盛の時期には、このような近接しての対面活動はご法度でした。その際、「①一人ずつの活動ならよいだろう」、「②屋外ならよいだろう」と考えて、60㎝ずつの板で個人の活動をすることに変化させました。自分の板と友だちの板をつなげて遊ぶということです。一人でもたのしい、友だちとやるともっと楽しいという考え方です。
これが、意外な効用を見せました。
一人のようで、独りではない。協働ではないようで、協働である。例えば短なわとびは一人ずつの運動ですが、いっしょの場所で活動することで一体感が生まれますし、跳び方の学び合いにもなりますね。それと似ています。
40mほど歩くと、学校内のプールの方面に下る坂道があります。そこでどんどんつなげていくのですが、くぎを打つ場所のすぐ近くにも短い坂をつくっておきました。ここで試してから坂道に行きます。2週目には、全員坂道付近に道具と材料をはこんで、その場でつくりながら試しました。10人以上ノンストップでビー玉が転がり続けるようになると、大歓声が上がりました。もちろん、マスクをしていますよ。
この活動を、60分一本勝負の今回の公開授業で実現させようと考えました。
成城学園にあった4mの板を2本使って、図工室内に坂道をつくりました。これで、すぐ試してすぐ改良できます。また、ふだんだと1週目にはくぎとゴムしか使わせないのですが、今回は時短のためにプラダンや細い板、王冠(装飾や音が楽しめる)も最初から示しました。
くぎ打ちは、ある程度慣れているようでしたので、げんのう(かなづち)の平らな面とふくらんだ面のちがいぐらいだけ指導し、抜き方を中心に指導しました。下の図の意味が分かる方は、どうぞご活用ください。
さっそく、くぎ打ちを始めた子どもたち。安全面の確認は、目と耳で行います。よい音がしていれば、おおむね大丈夫。成城の子たちは、リズミカルなよい音を立てていました。ほめて回るだけで、より一層姿勢も構えもよくなります。
ある程度完成が近づいて、4mの坂道で試し始めると交流が加速するのですが、やはり60分の活動では難しいかと焦り始めました。冷静な男の子に、「始めるまでに15分かかったから45分です」と言われてしまいました(笑)。
そこで、予定にはなかったのですが、全員に手を止めさせて互いの活動を見るために教室を一周させました。少し腰が重い子がいるなと思いましたが、私の勢いに押されて?教室を一周してから活動を続けました。後で粟津先生にうかがったところ、通常だと成城の子は「大丈夫です」と言って自分だけでやろうとするので腰をあげることは少ないとのことでした。でも一周見たせいか、気づかなかった材料の使い方やくぎの打ち方に気づいて、活動が変化した子も見受けられました。見合うことは大切な学びです。
申し遅れましたが、黒板に書いためあては、①やりながら考える、②見る、学ぶ、生かす、の2つです。最終的にはかなり達成されたと思っています。
授業の最後の5分間ほどは、4mの坂道は活発な交流場となっていました。参加した19名をピンクと黄色の2チームに分けて対抗させ、坂道も色で分け、黒板に個人タイムと協働タイムを書くようにしました。タイムが遅い(長い)、つまりゆっくりじっくり転がることが命題でしたので、ストップウォッチも用意しました。
もっとやりたい、という盛り上がりのうちに終了の時間が来ました。北川は「ほたるのひかり」を歌いながら、「ありがとうございました。またのご来店を・・・」と、子どもたちの手を止めさせます。
片付けはあっという間でした。用具や材料は、中央の机に用意しておいて、自分でもっていかせたので、片付けは、「元の場所に戻す」というシンプルな指示だけで済みました。
楽しい60分でした。参加してくれた子どもと、参観してくださった皆様に感謝を申し上げます。
ありがとうございました。