横浜国立大学附属鎌倉小学校 斉藤洋介
| 夏研のテーマ 「子どもと教師の「どうしたい?」~正解のない場を楽しむ図画工作~」 |
みなさんは、紙コップに何かを「かく」としたら、どんな場面を想像するでしょうか。他の人の紙コップと間違えないように名前を書く場面、パーティーを盛り上げる一手間の絵を描く場面、生活の中ではそのような場面でしょうか。
ある日、紙コップを用いた造形遊びに子どもたちが取り組んでいるとき、ふと子どもが言いました。
「先生、これに絵描いていい?」
積み重ねた紙コップをタワーに見立てた子ども。話を聞いてみると、紙コップに窓を表現したかったようです。
「今回は紙コップだけだけど、それもおもしろそうだからちょっと考えさせてね。」と返答し、題材研究が始まりました。
紙コップを図工の素材として見てみると、「色」は白い、「形」は円形…いや、円の大きさが異なる。飲み口となる部分は少し硬くなっている。「質感」は紙だ。画用紙のような、少し厚めの素材である。
円形の面に子どもの言うように絵を描いてみる。少し書きづらい。ここに絵を表現するのは難しいか。と、思ったときにふとライトが目に止まりました。
絵を描いた紙コップにライトを灯してみる。少しオレンジがかった優しい灯りに描いた絵が浮かび上がる。灯篭のように感じる様子に、「これ、重ねたら絵も重なるかな。」と発想しました。
ここで、紙コップの気が付かなかった特性に気が付きます。複数の紙コップが重なるのです。「これはいける!」と、確信を得た瞬間でした。
翌日、1年生に「紙コップランタン」と題材名を紹介する。子どもたちはライトが灯る紙コップから発想し、色をつけていきます。
ある子は「海」を表現し、ある子は「ハロウィン」の様子を表現しました。

「海」(左写真)では、紙コップの外側ではなく、内側から色を塗っていました。紙コップを通した柔らかく灯される明るさが、優しい海をイメージした子の表現として表れました。外側には島や魚を表現し、くるくると回しながら嬉しそうに自分のイメージを話してくれました。
「ハロウィン」(右写真)では、内側をオレンジに塗りつぶすのではなく、線で表現しました。少し怖い様子を表現したかったそうです。外側には「ジャック・オー・ランタン」を描きます。さらに怪しい雰囲気にするためにハサミを求めました。写真のように切り込みを入れて表現を続けます。

今回の実技研では「紙コップに灯るストーリー」という題材名にしました。重ねられる紙コップの特性を活かして、ストーリーを生み出していく題材です。

左の写真の作品は、1つ目の紙コップに表情を描き、重ねる紙コップに開けた穴から顔が出る表現です。悲しい表情から嬉しい表情へ。このように、ストーリーが紙コップを重ねると生まれます。
パラパラ漫画のように、重ね続けると生まれるストーリー。
オルゴールのように、重ね回すと生まれるストーリー。
ゲームのように、重ね動かすと生まれるストーリー。
ライトによって灯されるストーリーは、参加者の数だけ生まれるでしょう。
活動中は、部屋を薄暗くします。ライトに灯される紙コップに生まれるストーリーを共に愉しみましょう!
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