日常 造形論

会長就任のご挨拶

筑波大学附属小学校 北川智久

2024年8月の夏研を終え、長く会長として児造研を支えてくださった堀井先生が会長職を退かれることとなりました。新しく、北川が会長を拝命いたしました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

私は、安倍啓斎先生に誘われて本会に入会しました。2004年ごろのことですので、もう20年になります。私より長く所属されているのは、堀井先生、石賀先生、大泉先生だけとなり、世代交代が進んだなと今更ながらに振り返ります。

誘われたものの、「児童造形教育研究会」という名称の固さに腰が引けて、一回だけ夏研に参加してみてから入会するかどうか考えることにしました。無料でよいと言われましたが、只より高い物はない、一度無料で参加したらずるずると引き込まれると思って自費で参加しました。江戸東京博物館のホールで、平田智久先生と中村哲夫先生の実技コースに参加しました。なんとなく会の雰囲気が分かって、月例のスタッフ会議にもお試し参加することとしました。

初めて参加した児造研の月例会では、当然ながら夏研の振り返りをしていました。それがおわると、私の知り合いでもある石賀直之先生が造形遊びか何かの実践報告をされました。学びは多くおもしろいけれど、私(北川)はそのタイプの授業はやらないかな、などと心の中で思っていました。せっかくの提案に、なかなかケチをつけられるものではありません。すると、先輩の児造研スタッフが次々と質問や意見を述べ始めました。「この活動にはどういう意味や意図があるの?」「何がおもしろいの?」など、遠慮なくズバズバと言葉が飛び交います。石賀先生も言い返しますが、なかなかに形勢は不利という状態でした。その様子を目の当たりにし、児造研がフランクでおもしろい会だと感じました。そして、スタッフとしてお世話になる決意が固まったのを覚えています。

このように、実は児造研は月例会がおもしろいのです。今回の夏研でも、構想段階で修正が入ったり、研修会では実施しないことになったりしたアイデアもありました。20年たった今でも、フランクに意見を言い合う風潮は健在です。

そのような会に所属して、いったい何がおもしろいのかと思われるかもしれません。私たちは、年齢や経験を重ねると、他人から意見を言われることが少なくなります。自分でもバリアを張ってしまうのがわかります。だからこそ、児造研での刺激がおもしろいのです。児造研で自分の提案をするのは年に1~2回程度かもしれませんが、いつも何やら緊張しながら提案している自分に気がつきます。平気で異議を唱える連中が相手ですから。しかし、そこで認められ、ブログや夏研などで皆さんの目に触れることで喜んでいただけたときに、報われた気持ちになります。

最近では、コロナの時期からオンライン研修会の経験値が徐々に高まり、地方にも知り合いがふえました。今年の1月には、札幌で「おでかけ児造研」を、対面とオンラインの融合であるハイブリッド形式で開催することにチャレンジしました。児造研では古株の石賀直之先生と北川が実技講習を買って出て、札幌のみなさんやオンライン参加のみなさんにも好評を得ることができました。石賀先生とも話したのですが、正直なところ「遠方のアウェー感」を感じて緊張しながら臨んだ結果、たくさんの笑顔をいただくことができて、自分自身が一段階レベルアップできたような気持ちになりました。この緊張、予想、準備、対応、交流、感謝、成長などの一連の体験を、他の若いスタッフにゆだねるべきではなかったかと反省したりもしました。自分を磨く、会を磨くという視点で、常に前に進んでいきたいと考えます。

新会長を拝命したからには、以前からの本会のよさと、現代における新しいものごととの融合をもとに、児造研をますます豊かなものにできるように努めてまいります。

末筆となりましたが、協賛をいただいているサクラクレパス、後援をいただいている教育美術振興会に感謝を申し上げます。これからもよろしくお願いいたします。

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