冬研 大会

冬研の振り返り「マルチの下で…」

宮崎学園短期大学 薄井淳

今回の「おでかけ児造研」は大阪大谷大学ハルカスキャンパスにお邪魔しました。あべのハルカス23階にあり、とても景色の良い場所です。晴天の空の下、高層ビルの一室に幅135cm、長さ50mの黒い大きなシートを持ってきました。これは「農業用マルチ」といって、地温調節、雑草抑制などのため、畑に敷くためのシートです。今日はこのマルチを使って、ご参加の皆様と遊んでみたいと思います。どんな遊びができるのか、楽しみです。

まず、皆様にご協力いただき、部屋全体にマルチを伸ばしていきます。すると、部屋がだんだんと真っ黒になっていき、それだけで何だかワクワクしてきます。このとき、並んだ机の上にマルチを乗せるように覆っていくと、マルチの下に自由にもぐれる空間ができます。「さあ、下の世界にもぐってみましょう!」そんなかけ声をしなくても、子どもたちはもうマルチの下です。大人の方々も、ドキドキしながら潜ってみましょう。中にもぐると、まるで暗い地下世界のようです。点在する机がちょうど良い感じに道と壁をつくって、真っ暗な迷路を進んでいくようになります。“くぐって進む、地下迷路”、子どもが喜ばないわけがありません。途中で教師が声をかけないと、低中学年くらいだと、これだけで永遠に遊べてしまいます。

少し落ち着いたあたりで止まってみましょう。地下世界から見上げると、頭上はマルチシートです。今度は上のマルチを破ってみます。引っ掛かりのないシートは少し破りにくいですが、指先で小さくつまんで破るとうまく破れます。破れたら穴からひょこっと顔を出してみましょう。マルチからたくさんの顔が出て、本当に畑みたいです。顔を出した者同士がお互いに目と目が合うと自然と微笑んでしまいます。「あなたも地下世界から来たのね」「上の世界は明るいね」目を合わせているだけですが、そんな言葉が聞こえてきそうです。

一か所破ったら自然とどんどん破りたくなってきます。自由に破っていきましょう。長く裂く、間隔をあけて裂く、細かくちぎる、指で穴をあけるなど、様々な破り方ができます。破っていくと隙間から地下世界に様々な光がさしてきます。「きれいだなぁ」なんて見とれている時間も束の間、大勢の人が一斉に破るとあっという間にマルチはボロボロです。ボロボロになったら追加しましょう。何せ長さは50m。ボロボロになった上から新しくかぶせたり、横の隙間も覆ったり、結び目や穴を工夫しておしゃれにしてみたり、どんどん地下世界は変化していきます。

すると一部の参加者の方は地下世界ではなく、窓に貼ったり、天井からつるしたりと、上の世界での活動に興味を示し、上の世界がだんだんと賑やかになってきました。また一方では、マルチを帽子やドレスのようにして、身に着けることを楽しんでいる方もいます。地下世界だけでなく、上の世界も、自分も、ダイナミックに変化させて、参加者の方々それぞれの楽しみ方でマルチとの関わりを見つけていきました。はじめの想定では、「マルチの下で…」と題材名にもあるように、地下世界を変化させて、遊ぼうかと思っていたのですが、皆様がどんどんとマルチの楽しみ方を探求し、可能性を広げていったため、様々な遊びが生まれることとなりました。

また、使用したマルチを捨てずにとっておくと、再び造形遊びに生かせたり、工作の材料にできたり、様々な用途があります。このように使用した材料の再利用を子どもと共に考えていくと、子どもの環境意識にもつながります。ぜひ、皆様も教室をマルチで覆い、子ども達と楽しく遊んでみてはいかがでしょうか。最後に、皆様と共に学びあい、充実した楽しい時間をいただけましたこと、心より感謝申し上げます。

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